ブラックジャックの快楽の座が封印された三つの理由とは…
はじめまして。
まんがたいけんです。
ブラックジャックには封印されたエピソードが三つある。
指、植物人間、そして快楽の座。
快楽の座は、他二つのように単行本に掲載されたことがなく、未だに単行本には収録されていない完全封印エピソード。
- 用語の誤用
- 医師としてのプライド
- 利用された
実は、植物人間も、この快楽の座も抗議されたエピソードではなかったのだ!
記事の前半で、抗議されたエピソード、精神科の当時の状況、抗議に至った経緯などをまとめていて、後半で時系列にまとめてるから、ささっと知りたい人は時系列を確認すると、すぐに理解できる。
指は”刻印”と改題して収録
植物人間は4巻に収録されていたが、抗議後”からだが石に…”に差し替えられている
それでは、快楽の座がなぜ封印されたかをいっしょに見ていこう。
快楽の座にまつわるなぜを解明
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ブラックジャックは過去何度も形を変えていくつものバージョンで単行本化されている。
そのバージョンごとに未収録な理由とは!?
ブラックジャックの未収録EPの理由とは↓↓↓
【未公開秘話を紹介】ブラックジャックの未収録な理由を徹底解説!
三つの理由
- 手塚治虫の勘違い
- 医師としてのプライド
- 利用された
今封印されているものは植物人間、快楽の座。
この二つは抗議を受けた訳ではない。
あるエピソードが猛抗議を受けた結果、それらをテーマにしているこの二つのエピソードは収録しないでおこうということになった。
ブラックジャックは手塚本人が単行本に収録するエピソードを選んでいて、上記の二つは収録しないということで、それを守り続けているのが手塚プロダクション。
ただ、この二つのエピソードが直接抗議を受けたこともないから、もしかしたら今後新しいバージョンで単行本が作られるとなった場合収録される可能性はある。
快楽の座のあらすじ
トカゲが好きで、いつも部屋でトカゲに話しかけているような少年。
母親から見ると、暗い性格でなにもやる気を見せないところに不満を抱いていて、ある時病院に連れていくことになった。
医者に診せると”うつ病体質”と言われてしまう。
そこで、この医者が薦めた治療が、頭の中に電波を発して暗い気持ちをなくすことができるスティモシーバーを埋め込むこと。
手術も終わり、いつも暗い表情だった少年が、常に笑顔を絶やさないようになった。
そこで、母親は、枕元に合った週刊誌などは捨てて、教科書などを置いていく。
笑顔にはなっているが、大好きだったトカゲは地面に投げ捨て殺してしまい、手術をした医者は背中にナイフを刺し病院を抜け出してしまう…
といったあらすじ。
ここからは、私の考え。
果たして、この他人から見て暗いと見える症状は病気なのか?
という点。
そして、頭に電子機器を埋め込んで思考、感情を操作することは”人間の道徳としてどうなのか?”という点。
ある監督の記録への抗議
- 全国青い芝の会
- ロボトミーを糾弾したAさんを支援する会
- 東大精医連(東大精神科医師連合)
1976年12月153話 ある監督の記録の発表後に上記の団体に猛抗議されたことが、今も封印されている二エピソードのきっかけ。
彼らの主張はこうだ。
本来治る見込みのないはずの脳性麻痺患者がブラックジャックの手術で完治するのはおかしい。
というもの。
ロボトミーの問題点
ロボトミーの目的は、精神病に用いられる手術で興奮性を抑えるのが狙い。
それが、実際その治療法が実施されると、生活意欲が乏しくなる、外界への出来事への無関心といった症状が起きていることでその治療法に疑問が持たれ始めてきた。
こういうった症状が
興奮を抑えていると捉えていたんだろうね
植物人間の方はロボトミー、快楽の座の方はスティモシーバーが問題があったと考えられている。
両方とも脳を扱っていることが共通点。
私をはじめ素人では用語だけだとわからないから簡単に説明しよう。
精神外科の一術式で、脳の前頭前野の神経線維の切断を伴う脳神経外科的な精神障害の治療法である。
引用:前頭葉白質切截術
この治療法はもエガス・モニス博士によって創始されアメリカで発展したもの。
しかも、この治療法は画期的な手術法として1945年にはノーベル医学賞を受賞している。
西洋医学信奉者、ノーベル賞ってすごい!
って思ってる人たち大丈夫?
西側発のものって本当に正しいの?
そんなこともあって、抗精神薬が出てくるまでは日本はもちろん、世界中で実施されていた手術法だった。
ところが、上述したように、”生活意欲が乏しくなる”、”外界への出来事への無関心”といったことが表面化してきて問題視され始めてきた。
日本では、日本精神神経学会は1976年5月13日の総会で医療としてなされるべきものではないと決議された。
エール大学のホセ・デルガード教授 (Jose Manuel Rodriguez Delgado) が発明した装置である。
スティモシーバーを埋め込んで信号を流すと人間の感情を操作したり肉体を動かしたり出来ることが実験によって確かめられた。
引用:スティモシーバー
デルガド博士は1950~1970年代にかけて猿、山羊、猫など動物の脳に装置を埋め込み実験を行っていた。
その後、実際に人間にも施している。
1968年に同様の実験を人間で実施し,20歳のてんかん女性の喜怒哀楽を遠隔操作して見せた)。
症例数が20名に増える頃には,これは人を洗脳するものと激しく糾弾され,デルガドは米国での居場所を失い祖国に戻ることを余儀なくされた。
マンガの神様,手塚治虫も1975年にスティモシーバーを少年の脳に埋め込む少年漫画を描いた。
この作品は自主規制がかかり通常の方法では閲覧できない状況になっている。
引用:ロボトミーの歴史(5):ノーベル賞・落日のロボトミー・社会問題化
また、アメリカでは、現在うつ病の治療のために”脳のペースメーカー”といった表現で脳に電極を植えて刺激する治療法が承認されつつある。
精神科について
ある監督の記録への抗議した中に東大精医連(東大精神科医師連合)という団体がある。
この団体は
ロボトミーは手術自体が人体実験の側面を持っている
脳のどこを壊したらどんな症状や障害が出たかを見る、どう人格が変わるか観察するなど、本来なら動物でやるところをロボトミーなら人間を使ってやることができる。
そして、その当時ロボトミーは世間的には全く知られていなかった。
彼らがその話をしても
昔の話でしょ
といった具合。
でも、実際精神病院の中には本当に収容所みたいなところもある。
精神障碍者は医療の対象じゃなくて収容の対象といった側面がある。
只今放送中! #ETV特集 「ルポ #死亡退院 #精神医療 ・闇の実態」
— NHK「ETV特集」公式 (@nhk_Etoku) February 25, 2023
患者への暴行容疑で看護師が逮捕された東京の #精神科病院 。ETV特集は、この病院の内部映像や患者のリストを独自に入手、1年に及ぶ取材を続けてきた。闇の向こうに見えてきた私たち社会の姿とは?
#Eテレ #滝山病院 pic.twitter.com/TXSBFvLxXf
私は何度か精神的な何かを抱えている人と近づいたことがある。
一人は統合失調症。
その子に話を聞くと
バスが突進してくる映像が見えてたよ
その時より10㎏位太ったけど今の方が状態がいい
とか
躁うつ病で
躁状態の時は無敵!
とか、聞いてた。
統合失調症の子は今はもう付き合いはないけど、もう一人の躁うつ病の子は今でも薬を飲んでいる。
私は実際最近色々勉強してる上で精神科って本当に大丈夫なのか?
という疑問を持っている。
精神薬は麻薬と同成分、それより強いものも多い。ヘロインやってもコカインやっても、決して精神の悩みや苦しみは治らない。飲んでる本当の意味もわかってないのだろう。#コロナは茶番 #ワクチンの副作用 #精神科は今日もやりたい放題#心の絶対法則#市民がつくる政治の会
— 内海 聡 (@touyoui) April 7, 2021
と話している医者もいるし。
今、食とか健康についての勉強をしている。
その延長線上で、精神科についても本を読もうと思っている。
まして今私は
西洋医学への不信感がデカいし
患者を収容して出世する
当時精医連は台弘東大教授と対立していた。
ロボトミー手術だけを良いとか悪いとかいっているのではなく、研究のために患者をモルモット扱いして業績を上げて偉くなるという構造が精神科の界隈では根深く残っている。
そして、精神病院の実態について批判していた。
精神障碍者+脳性麻痺団体の動き
精神障碍者や脳性麻痺の人たちが
俺たちだって人間だよ
といって声を上げていた。
そういった精神障碍者や脳性麻痺の団体と一緒に動くことが多かった精医連。
ブラックジャックの問題もそうした動きの中で起こった出来事だった。
ロボトミー殺人事件
1979年秋、70歳の母親と44歳の娘が自宅で何者かによって殺害される事件が起こりました。犯人はその日の夜に銃刀法違反で逮捕されていたSという男で、動機はかつて受けた精神医療に対する復讐でした。
参照:「ロボトミー殺人事件」昭和の精神医療が生んだ救いのない復讐劇
S氏は、海外スポーツ情報の乏しさに腹を立て、新聞社や出版社に片っ端から便りを出していたが、なぜかそういった行動がきっかけとなり原稿依頼が舞い込むようになった。
その後、母の老後の話し合いで妹一家と言い争いになったS氏は器物損壊の現行犯逮捕されてしまう。
彼は、今回の逮捕の前にも二度ほど警察のお世話になっていて前科もあるということで、精神病院へ入院させられてしまう。
ちなみに、彼はこんなことも漏らしている。
刑務所より酷かった
その精神病院で、チングレクトミーというロボトミー手術の一種を施される。
その後意欲や感受性が鈍くなり執筆どころではなくなりスポーツライターを引退。
その後は職を転々としながら、自分が今の境遇になったのは”ロボトミー手術のせいだ…”と考えて、この手術を指示した医者を殺してやると決意。
そうして、上述した事件が起こってしまった。
もともと、このロボトミー手術というのは精神障碍者に対して興奮を抑える目的で用いられるものだったものが、こういう事件を起こしてしまった。
手術の意味はないじゃないか。
ということになる。
なぜかブラックジャックの快楽の座を読まないで抗議!?
二つのエピソードが封印された理由
1971年3月 | 精医連が台教授を人体実験と告発 |
---|---|
1974年8月 | 41話 植物人間発表 |
12月 | 58話 快楽の座発表 |
1975年5月13日 | 日本精神神経学会が”精神外科を否定する決議”を採択 |
1976年12月 | 153話 あるい監督の記録発表 |
1977年1月 | ある監督の記録に対して複数団体が抗議 |
1月23日 | 手塚治虫が団体らに謝罪 |
1977年頃 | 植物人間がチャンピオンコミックス4巻で差し替え |
1978年9月 | ブラックジャックの連載終了 |
1989年2月9日 | 手塚治虫死去 |
1990年9月 | 黒人差別をなくす会が手塚プロに抗議 |
1990年暮れ | 手塚治虫漫画全集、ブラックジャックなどが出荷停止 |
1992年頃 | 注意書きを入れることで出荷再開 |
抗議されていない植物人間、快楽の座は封印されているけど、ある監督の記録は封印されていない。
それは、このエピソードが後に”フィルムは二つあった”と改題された。
問題となった脳性麻痺からデルマトミオージス(皮膚筋炎)に変更され、原稿は加筆修正して、ロボトミーというセリフも変更することで抗議の部分を全面的に変えて発表された。
結局この二つのエピソードが封印されたのは手塚治虫の意向による。
- 用語の誤用
- 医師としてのプライド
- 利用された
手塚治虫は植物人間では、頭蓋骨石灰のフリガナに”ロボトミー”としているが、実際には患者の脳の一部を切って症状の改善を促すものを指している。
ある監督の記録で抗議された時もロボトミーに対する抗議はあったものの、スティモシーバーについては何も出てきていない。
手塚治虫は脳をテーマに扱うことについてかなり慎重になっていたと考えられる。
そして、おそらく一番大きな理由がこれ。
漫画評論家でコミックマーケットの創設者の米澤嘉博氏の言葉。
医者だから気にしたというのもありえますね。
手塚治虫は漫画界の第一人者。
文化人の代表という立場だったわけです。
それがやっぱり認識が間違っていた部分があって新聞に大きく報道されたことは、非常に恥ずかしかったと思います。
人権意識が足りないとも思われたくなかったでしょう。
脳手術の問題を前面に出した二作品を削ったのはそれが理由なんじゃないでしょうか。
今でも単行本のバージョンによっては未収録エピソードがある。
上記の二つのエピソードの他にも一時お蔵入りになったものはあったけど、その後再検証して再開されたものがある。
だから、今後収録される可能性はある。
漫画を読んでないヤツが言うな!
ブラックジャックを読んでいる多くの人はブラックジャックという作品が人種差別を助長しているとか、ロボトミー手術を美化なんかしてないことを知っている。
もし、抗議を起こした人たちの中にブラックジャックを熟読していた人がいたら、抗議は起きなかったのではないか。
漫画界の第一人者に噛みつくことで
注目を集められると利用しただけ
こういう行き過ぎた抗議は漫画家、出版社を委縮させる。
私はテレビは観ないけどテレビ界とかエンタメ業界をつまらなくしてるのは左翼とか声の大きいものたち。
一つ一つ表現を奪っていっているからな。
最近話題になってる性表現が性犯罪を助長させているというものもそう。
まんがたいけんの親サイト・えでくーでこの問題を取り上げている↓↓↓
漫画の性表現は犯罪の教科書?
ただ影響力のあるところを利用して問題を大きくする。
これを何も考えない、関心がないものたちが食いつく。
大きな声になる。
メディアが大合唱。
この構図が物事を縮小させているのを自覚せよ。
みんなもっと自分の頭で考えようぜ。
手塚治虫の当時の状況
手塚治虫はこのころブラックジャックを2日で描いていたらしい。
しかも、ブラックジャックには並々ならぬ思いを込めて描いていたという証言もよく聞く。
それを表してる興味深いエピソードがある。
当時、手塚のところでアシスタントをしていた手塚プロダクションの資料室長の森晴路氏は
出来がよくないので
入れない方がいいんじゃないですか?
といったらそうなったという。
今の時代ならネットが発達してるからわからないことでも、ネットで調べれば大抵のことはわかったりする。
でも、当時はネットなんかなくて、手塚治虫自身が
私が医学をまなんだのは学生時代だけで、その後の医学の進歩、問題点についてはまったくといっていいほど知らない
といっている。
時間がない中で必死に物語を作って、必死に漫画を描いていた。
私は基本的に手塚治虫とか藤子不二雄のようなシンプルな絵が好きではない。
だから、あるとき”手塚のことならだれにも負けない”といっている鉄門会兄に聞いたことがある。
手塚治虫ってなんで神様って言われてるんだろう
別に絵が上手い訳でもないし
手塚ってさ死ぬほど作品描いてるんだよ
そういう諦めない心とかが神様って言われる所以なんじゃないかな
正確に言ったことは覚えてないけど、こんな事を言っていたような気がする。
もし、これを読んだら鉄門会兄さん連絡してね。
そんなことを思っていたけど、2日で作品を仕上げるというのは尊敬に値する。
どれだけ心身を削って漫画を描いていたか…
私も漫画描き人生の中で1ヶ月最高115ページ描いたことがある。
当時は原稿料さえもらえれば一カ月200ページまではいけると思っていた。
と思ってたら手塚治虫は
生涯最高1ヶ月で315ページ描いたらしい…
ビックリするわ
漫画を描くっていうことがどんなに大変で、どんなに精神を病むか…
卑怯だぞ!
読まないで批判をするな!
連載が終了した理由
ブラックジャックは何度も連載を辞めろ!という抗議はあったという。
このことについて興味深い話がファンクラブの会誌にある。
あまりにも制限や制約の多さに、描きようがなくなったことがあります。
いつぞやのロボトミーの事件は、明らかにミスによるものでしたが、その他にも、いろんな団体や組織から、これを描いてはいけない、あれを描いては困る、という抗議がいろいろ来て、しまいには、ブラックジャックは、ただのケガを治す救急医師みたいな立場になってしまい、病気はほとんど扱えなくなってしまったからです。
抗議はおもに描かれた病気の患者さんとか、医者、肉親からですが、中にはマンガとはいえ、でたらめを描かず真実の話を描け、などという抗議もあって、本当に描きづらくなっということはたしかです。
でもまぁ、色々言ったけど多業種っていうか、仕事の大変さなんてわからないよね。
自分も大変だろうなとは思っても政治家って何が大変なのかわからないし、一見楽そうに見える仕事でも大変だろうな。
それでも確実に言えることは、抗議によって表現は狭くなってくるから、みんな勉強しないとどんどん生きづらい世の中になっていくよ。
まとめ
- 封印理由は手塚治虫の用語の誤用
- 医者としてのプライド
- たまたまタイミングが合って利用された
- 行き過ぎた抗議が表現の自由を委縮させる
こうして時系列で整理するとどうしてブラックジャックが叩かれたのかわかるな。
それにしても、行き過ぎた抗議は創り手を委縮させることを理解しないと、エンターテイメント界は崩壊していくぞ。
まったく…
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